タクシードライバーは日々分岐路の連続、人との出会い、そしてお客さまそれぞれの人間ドラマを乗せて走ってます。今回はそんなタクシードライバーが主役の小説をご紹介します。

 

本を読むときは電子書籍がおすすめ!家ではパソコンで、車内ではスマホで読めるので便利です。 無料でダウンロードして簡単に使えますのでおすすめですよ。

 

読書するならKindle Unlimitedがおすすめ
読書好きな方にはとってもお得な Kindle Unlimited がおすすめです。月額¥980で読み放題!初回30日の無料体験も出来ます。

「あの日にドライブ」荻原 浩

たまたま乗せた読書好きなお客さまから面白いから読んでみてと勧められた一冊。タクシー関連の小説を読み漁るキッカケになった一冊でもある。
人生は偶然でなりたっている。主人公の牧村伸郎は元エリート銀行マン、訳あってタクシー運転手になる訳だが曲がり角を間違えたと自分の人生に後悔ばかりの冴えない男。

 

なにかと銀行マンとタクシー運転手を比較して落ち込むという設定なのでタクシー運転手という職業がいかにも劣悪な環境という描かれ方なのだけど、現実を知っている僕らは思わず突っ込まずにはいられない。とはいえ同年代としてはこれまでの人生の迷路を牧村と一緒に振り返ってしまう面白さがある。たまたま乗せた客、たまたま選んだ人生の岐路を一番短に感じることが出来る職業なんだなぁと改めて感じられる作品です。

「星空への寄り道」森 浩美

家族をテーマにした短編集「家族の言い訳」に収録されている短編です。主人公は、経営していた会社が潰れ、借金を背負い、全てに絶望した40代の男。会社を閉めるための財務整理に追われながら、ふと真夜中の事務所で家族に向けて遺書を書こうという気になるのですが、それすらも面倒になり、投げやりな気持ちでタクシーを拾います。

 

初老のタクシー運転手にタバコの投げ捨てを注意され、疎ましく思う主人公ですが、そのうちにそのタクシー運転手にも自分と同じように娘がいたことを聞き・・・。人生の寄り道をするのもよい、という運転手の言葉に、主人公は思いついて行き先を変え、運転手としばしの寄り道をすることにします。読み進めるうちに家族のつながり、大切な人を失う悲しさとそれでも生きていくことの切なさに胸がぎゅっとつかまれるようで、最後には穏やかな気持ちに包まれるそんな短編小説です。

「スマイルメーカー」横関 大

どんな難しい客でも必ず笑顔にしてタクシーを降りてもらうということを決めているタクシー運転手五味のタクシー車中の描写から物語が始まる。この五味を含めた3人のタクシー運転手と3人の乗客がメインで登場し、場面が切り替わりながらそれぞれの視点から物語が進んでいくミステリー作品となっている。

 

段々とそれぞれの物語が絡み合い、関連性が明らかにになってきて、なるほどそういうことか!と楽しめる。伏線が多数散りばめられており、それが回収されていく面白さや、一見重要でなさそうな登場人物も後半でスパイスを効かせてくれたり、読み進めていくにつれてどんどん面白く引き込まれていくので、最後まで飽きることなく夢中になって読めること間違いなし。スッキリとした読後感を味わうことができ、もう一度読みたくなる本。

「ねこタクシー」永森裕二

元教師で人付き合いの苦手なタクシー運転手の間瀬垣が公園で出会ったねこの御子神さんをタクシーに乗せることで変わっていきます。間瀬垣は、営業所には内緒でねこタクシーを始めます。タクシーに乗るお客さんとのやりとり等含めて、単純にほのぼのとは言いにくいお話ですが、ねこの御子神さんに癒されて読みやすくなっています。

 

序盤は主人公があまりにも情けなく、読むのがつらくなってくるのですが、猫の「御子神」さんと出会ってからは人生も変わり始め、物語も走り出します。ねこタクシーは人気になり成績は上がっていくのですが...。ねこの御子神さんがとてもキュートで、猫好きな方はもちろん、人生に迷っている方にもおすすめの一冊です。

「小説素敵な選TAXI」バカリズム

「やり直したいなら、ご乗車ください」タイトルの「選TAXI」は「選択肢」との語呂合わせとなっていて、ある時に乗せたお客さんの人生の重大な選択をするような場面に、主人公であるタクシーの運転手がタイムスリップによって、お客さんを選択前の時間へ戻して異なった選択をさせてあげると言うある種の人助け的なコメディとなっています。

 

この小説はドラマの脚本がベースなので10話のショートストーリーで構成されていて大事な選択を迫られた、もしくは選択の結果後悔するような結果となってしまう人、いろいろなパターンが登場します。日常の営業の中でも、何かの理由で凄く急いでいる人や泣いているような人、怒っている人などなど様々な状況のお客さんがいるはずです。数多く出てくる本作のお客さんの中にはきっと似たような状況のお客さんを乗せた経験があるはずで「あんなお客さんいたな~」とか「そういえば、あの○○だったお客さんはどうしたのかな?」と思いだしたりして、クスっと楽しめる、さらに人生の分岐路についても考えさせられる一冊です。

「土の中の子供」中村文則

主人公がタクシー運転手です。決して明るい話ではなく、むしろ生きていくための辛さを描くドラマです。仕事内容に辛さを感じているのではなく、育った環境、育てられ方に問題があるために、大人になってからの苦労が描かれています。主人公は比較的若い青年なので、今後の人生観に響く作品になっています。

 

とにかく辛く苦しい状況に敢えて自分を追い込む事がライフワークのような状態でストーリーは進みます。しかし、読み終わった後は苦い哀しみしか残らないという訳でもありません。題材が暗い事に違いないのですが、それでも生きて行くというどうしたって前向きにならざるを得ない現実が、少し優しく読み手を包んでくれるかの様な心持ちになります。そもそもハッピーエンドが何なのか、それこそ読み手によって違ってきます。この作品は暗さの中にも愛があってこその展開になっていると思います。血をみる様な場面はほぼ無く、サスペンスとも違うので、純文学のような辛さがしっとりと残る印象を受けます。生きてゆくという単純で大変な道が誰にも有り、何時までかわからないけれど限りがあり、その中で燃えている1人の男が、自分にも投影出来る読むべき作品です。

「東京タクシードライバー」山田清機

13人のタクシードライバーに自らを重ねつつ、生涯の勝者ではなくとも、与えられた運命を、ひたむきに気高く生きる13の人間模様を描いたノンフィクション作品。

 

東京の運転手さんなら「あ〜あの道ねとかあの場所かなどなど映像が浮かんでくる場面が多いのでリアル感たっぷりで面白い。登場人物が決して特別ではなく、同僚のあの人も人には語らない人間ドラマを持っているのかもしれませんね。

「タクシー関連の小説」まとめ

以上現役ドライバーに絶対おすすめタクシー関連の小説7冊でした。
なんだか人生の分岐路だったり偶然の積み重ねだったり諦めた夢だったりそれぞれの過去だったり共通するワードが多かった気がします。
改めてタクシーって考えると深いものです。たまたま乗せたお客さまが、たまたま手に取った本がちょっとした道しるべになるかもしれません。

 

おすすめの記事